空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第1章 空調設備を学ぶ前に

1-8 空調負荷の軽減

空調負荷とは

熱には顕熱(けんねつ)と潜熱(せんねつ)があります。空調負荷を考える上では、顕熱は水蒸気を含まない熱、潜熱は水蒸気を含む熱と考えて問題ないです。テレビなどの家電製品やOA機器が発する熱、照明器具からの熱、壁、窓、床からの放射熱などが顕熱です。一方、呼吸を含む人体からの熱、調理で出る熱などが潜熱です。

私たちが室内で暑さや寒さを感じるのは、空気中の熱(顕熱と潜熱)の量に関係します。簡単にいうと、空気中に含まれる熱が多ければ私たちは暑いと感じますし、熱が少なければ涼しいと感じます。

室内の温度や湿度を快適に維持するためには、過剰な熱を取り除き、不足する熱を補う必要があります。この取り除く、あるいは補う熱量が空調負荷です。一般に夏は冷房、冬は暖房が必要になるので、空調負荷には冷房負荷と暖房負荷があります。

冷房負荷とは、快適な温度、湿度を維持するために取り除く熱量のことです。水が高いところから低いところへ流れるように、熱も温度が高い方から低い方に移動します。 夏は一般に室外の気温が高いため、熱は室外から室内に向かって移動します。冷房時は、室内に侵入してきた熱を取り除き、室内で発生する熱も取り除く必要があります。顕熱と潜熱を取り除くことで室内の温度と湿度を調整します。

暖房負荷とは、室内を快適な温度、湿度に維持するために補う熱量のことです。冬は一般に室内が高温になるため、熱は室内から室外へ向かって移動します。 室外に出て行く熱がある場合、それを補う熱がなければ室内の温度は保てません。また、暖房時は、人の呼吸や調理などで出る潜熱だけでは一定の湿度を保つことができない場合が多いため、加湿することで湿度を調整します。

空調負荷の軽減

これまで本章で学んだ建物の断熱性、熱容量、日射、日照のコントロールなどは空調負荷の軽減に深く関係しますが、空調負荷を軽減する方法は多岐にわたるので、一口で説明するのは難しいです。本講座の第1章は間もなく終わりとしますが、空調負荷の軽減に関することは、第2章以降もその都度取り上げていきます。

本来なら夏は暑く、冬は寒いのが当たり前です。空調設備は人工的に夏に涼しく、冬に暖かい環境をつくる設備ともいえます。人工的に快適な環境をつくって維持するためには、何らかのエネルギー消費が欠かせません。 現在、世界の人工は70億人を超え、2050年までに90億人を超えるといわれます。今後、空調設備のエネルギー消費は莫大なものとなり、資源不足もますます深刻になると予想されます。

人類の歴史から見ると、そのほとんどは自然と共に暮らしてきました。私たちと空調設備の歩みはまだ始まったばかりです。これからの空調設備は、さらに便利に快適になっていくでしょうが、省エネ、環境問題などに真摯に向き合い、人と環境にやさしい空調設備であることを願います。

執筆:イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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