空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第7章 換気設備

7-1 換気の目的とは

わたし達が暮らす地表面の大気(空気)の成分は窒素が約78%、酸素が約21%、その他、アルゴン、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気などから構成されます。長い地球の歴史によってつくられた空気の成分のバランスは絶妙で、このバランスが極端に崩れると、人を含めたさまざまな生き物は生きていけなくなるのは誰でも想像できると思います。

空調設備で使う熱源や燃焼器具などは、燃焼によって空気の成分のバランスを崩す恐れがありますし、不完全燃焼をおこせばなおさら危険性も高まります。空調設備という観点から見て換気はとても重要で、本来の空気の成分のバランスを保つ上で欠かせないものです。本講座もいよいよ最後となります。最終章は換気設備について一緒に学びましょう。

換気の目的

換気の目的とは何でしょうか。広い意味では前述したように空気の成分のバランスを崩さないことですが、もう少し具体的に考えると、換気は人が呼吸する上で欠かせない酸素を供給する。熱源機、厨房機器、コンロなどの燃焼に必要な酸素を供給する。人体、OA機器、熱源機、厨房機器などから発生する熱を排除する。浴室、厨房、キッチン、床下、屋根裏などの湿気(水蒸気)を除去する。浮遊粉塵、ホルムアルデヒド、臭気などを排除するなどの目的で行われます。

室内の空気の汚染原因について考えてみましょう。主な汚染原因は、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、浮遊粉塵、化学物質、熱、水蒸気、臭気などです。

  • 一酸化炭素(CO)

    一酸化炭素はコンロ、ストーブ、熱源機など、燃焼する機器の不完全燃焼から発生する場合が多いです。一酸化炭素中毒という言葉を聞いたことがあると思いますが、わずかな量でも人の命に関わる危険性があります。建築基準法などによる空気中の許容値は10ppm(0.001%)以下です。


  • 二酸化炭素(CO2)

    二酸化炭素は大気中にも0.03%ほど含まれる成分ですが、人の呼吸や物の燃焼などでその濃度が増えます。空気中の濃度が高くなると、二酸化炭素中毒といわれる危険な状態になります。3~4%ほどで頭痛や吐き気などを催し、さらに濃度が増していくと死に至る場合もあります。許容値は1000ppm(0.1%)以下です。


  • 浮遊粉塵

    浮遊粉塵はタバコの煙やアスベスト繊維など、粒子がとても細かく、空気中に浮遊する汚染物質です。肺ガンのリスクを高め、その許容値は0.15mg/m3 以下です。


  • 化学物質

    空気中に含まれる化学物質にホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物があります。シックハウスやシックビル症候群の原因になり、建材や家具の接着剤などから揮発する可能性がある物質で、その許容値は0.1mg/m3 以下です。




  • 主に燃焼器具や熱源機から出る熱の他、人体からの熱も除去の対象です。


  • 水蒸気

    調理、人の呼吸、入浴やシャワーなどによって水蒸気が発生します。場所としては厨房、キッチン、浴室、屋根裏、床下などが特に水蒸気除去の対象です。


  • 臭気

    タバコの臭い、調理による臭い、トイレの臭い、あるいは体臭、更衣室にこもる臭い、新建材の臭いなど不快感を感じさせる臭い全般も除去の対象です。


以上のような汚染原因を取り除き新鮮な空気と入れ替える。あるいは新鮮な空気を取り込んで希釈するなどによって建物内の空気の清浄度を快適に保つことが換気の目的です。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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