工具の通販モノタロウ 空調設備の基礎講座 空気調和の役割と目的

空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第1章 空調設備を学ぶ前に

1-1 空気調和の役割と目的

現代の空調設備を学ぶ前に、有史以前の人類の暮らしを想像してみましょう。先人達は、自然がつくり上げた洞窟や、その土地で調達できる石や草木などを利用して住まいをつくり、雨、風、暑さ、寒さを凌ぐ工夫をしながら暮らしていたであろうと想像できます。

諸説ありますが、中国(周口店遺跡)の北京原人の遺跡から火の利用跡が発見されているので、人類が「火」を使うようになったのは、少なくとも約50万年以上前にさかのぼるといわれます。 火山活動や雷などによる山火事に遭遇し、その火種を持ち帰って焚き火にしたのか、どのように火を手に入れたかは定かではありませんが、何らかの方法で火を手に入れ、利用することを覚え、やがて道具を使って自力で火を起こせるようになったと推測されます。

火を使うようになったことで、暮らしは劇的に変化したはずです。寒いときには暖をとることができます。暗闇の中に明かりが灯り危険な動物から身を守ることもできます。火を通すことで食べられるもの多くなります。

先人達の暮らしで利用された火の役割を現代に置き換えると、暖房、照明、防犯など、暮らしを便利にする設備の役割を担っていることに気付きます。火を絶やさないためには、ある程度、雨や強風を凌ぐ必要があるので、住まいの中に火を持ち込んだとすると、やがて換気設備の重要性にも気付くはずです

さて、これから暖房、冷房、換気など、空調設備について学んでいきますが、現代の空調設備も先人達の知恵や努力の上に成り立っていることを頭の片隅において、感謝しながら楽しく学んでいきましょう。

現代の建物は「意匠」、「構造」、「設備」が一体となって成り立っています。意匠は建物のデザイン要素を含む外観を形成して、構造は建物の骨格となる躯体を形成します。意匠と構造が一体となることで雨、風を凌ぐ建物の基本が備わったともいえますが、やや乱暴な言い方ですが、それだけでは建物はただの「箱」です。 暑さ寒さも凌げず、水も飲めず、トイレも風呂も使えず、電気も使えない環境で私たちは暮らしていけません。現代のニーズに対応した建物の役割を果たすには機能面を担う建築設備が整って初めて快適な暮らしが成り立ちます。なお、建築設備とは空調、換気、給排水衛生、電気、通信、防災、消防設備などのことです。

空調設備における空気調和の目的は、室内、室外の状況変化に応じて、そこに住まう人や働く人が快適と感じるように温度、湿度、気流、清浄度を整えることです。室内の温度、湿度、気流、清浄度のバランスを崩す要因はさまざまですが、室外の四季の影響、日照、立地条件、地域など、さまざまな外的要素が室内環境に影響を与えます。 その他、コンロやストーブなどの燃焼器具による一酸化炭素(CO)、人の呼吸などによる二酸化炭素(CO2)や水蒸気、タバコなどによる浮遊粉じん、建材や建具などから発生するおそれがあるホルムアルデヒドなどの化学物質なども室内環境のバランスを崩す要因になります。

建築基準法やビル管理法などでは、人が快適と感じる温度、湿度、気流の許容値や人体に悪影響を及ぼす空気汚染物質の許容値を以下のように定めています。

項目 許容値 備考
温度 17~28℃ 室内と室外の温度差を著しくしないこと。一般には夏期で25~28℃、冬期で17~22℃が快適範囲。
湿度 40~70℃ 一般的には40~60℃程度が望ましい。
気流 0.5m/s以下 0.05m/sを超える空調の冷風などは人に不快感を与える。
一酸化炭素(CO) 10ppm(0.001%)以下 燃焼器具の不完全燃焼などによって発生する場合が多く、中毒症状を引き起こし、死に至ることもある。
二酸化炭素(CO2) 1000ppm(0.1%)以下 人の呼吸や暖房器具の燃焼などによって発生し、大気中に0.03%程度含まれる。
浮遊粉じん 0.15mg/m2以下 浮遊粉じんは、人の肺胞内に沈着して健康障害を引き起こすリスクが高くなる。
ホルムアルデヒド 0.1mg/m2以下 建材、家具の接着剤などから発生し、シックハウス症候群の原因となる。温度、湿度が上昇するほど、放散量も増加する。
執筆:イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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