空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第4章 熱搬送設備

4-4 ダクトの振動や騒音対策

ダクト振動や騒音の対策

空調設備では送風機、冷凍機、空調機といったモータを回転させるなどから振動や騒音を発生させる機器を多く使います。ダクトは施工方法を間違えると、これら機器からの振動や騒音を建物の内外に伝える通り道になってしまう場合があります。ここではダクトの振動や騒音の対策について考えてみましょう。

振動や騒音を発生させる要素のある機器とダクトの接続部分には「たわみ継手」を取り付けて機器からダクトへの振動を遮るようにします。なお、熱伸縮によるダクトの変形を吸収する目的、接続しあう2つの軸のずれを補正する場合などにたわみ継手を使用する場合もあります。材質としてはガラス繊維系、合成繊維系、ゴム系などがあります。例えば排煙ダクトなど不燃性を求められるような場所ではガラス繊維系の片面にアルミ箔を貼ったものを使い、耐薬品性が求められるような場所ではガラス繊維にフッ素樹脂をコーティングした製品を使うなど、使用場所や用途によって材質を使い分けます。

フレキシブルダクトとは蛇腹状になっていて、ある程度、自由に曲げることできるダクトのことです。自由に曲がるので当然、施工性が良いのが特徴です。基本的には機器との接続箇所に使用し、通常の継手では対応できないところや狭い天井裏などでよく使われます。金属製のものや合成繊維系のものなどがあり、グラスウールなどで覆って消音、保温性を持たせたものが空調設備ではよく使われます。

ダクト振動や騒音の対策

ダクトの支持方法

丸ダクトを天井のスラブに一点吊りする場合は吊りボルトに専用の吊りバンドなどでダクトを支持します。地震対策として必要に応じて全ネジやワイヤーで振れ止めが施されます。

角ダクトの吊り支持の場合は、スラブに埋め込まれたインサート金物に吊りボルトをねじ込んで山形鋼などのアングルを吊り、その上にダクトを乗せて支持するのが一般的です。丸ダクトと同様に必要に応じて振れ止めをします。また、角ダクト、丸ダクト共に振動を躯体に伝えないようにするために防振ゴムを付けた専用の金具で吊る場合もあります。

ダクトの支持方法

ダクトの消音

近年、送風機など、ダクトと接続する機器類は消音、静音タイプのものが多いですが、必要に応じてダクトルート内に消音器(サイレンサー)を個別に設置して騒音対策する場合もあります。消音器にはスプリッタ型やマフラー型などがあり、鋼板の箱の中にロックウールやグラスウールなどを充填して吸音、消音機能を持たせています。写真のように消音ボックスの中に送風機を納めたタイプのものもあります。

ダクトの消音

ダクトの拡大、縮小、曲がり

ダクトの断面の急激な変化はエネルギーロスの原因になりますし、空気の抵抗でダクト自体が振動して騒音を発生させることもあるので、なるべくダクトの拡大、縮小、曲がりは無いのが望ましいですが、止むを得ず変化させるときはなるべく緩やかに変化させることを心がけます。

例えば拡大させるときで15°以下、縮小させるときで30°以下の緩やかな角度で変化させます。また、急な曲がりはなるべく避けるように施工します。施工上やむを得ず急な曲がりとなるような場合は、内部に風の案内羽となるガイドベーンを取り付けるなどの対策を取るのが一般的です。

ダクトの拡大、縮小、曲がり

ダクトの壁貫通部の処理

例えばダクトが鉄筋コンクリートの壁を貫通する場合は、壁とダクトとの間にモルタルやロックウールなどを充填してダクトの振動を躯体壁に伝えないように処理します。振動を伝えないという意味ではモルタルよりロックウールの方が有効です。

火災が燃え広がるのを防止する防火区画といわれる壁を貫通するダクトについては、厚さが1.5mm以上の鋼板などで防火区画を貫通させ、ダクトと壁の間にはロックウールなどの不燃材を充填します。

ダクトの壁貫通部の処理

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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