工具の通販モノタロウ 空調設備の基礎講座 真空式と無圧式温水ヒータの特徴

空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第3章 熱源と主要機器

3-12 真空式と無圧式温水ヒータの特徴

法的な規制を受けるボイラは一定の資格者でなければ扱えません。法的な規制を受けるボイラとは「ボイラー及び圧力容器安全規則」の対象になるボイラのことで、通常の大気圧ではなく、圧力のかかった缶体で高温の温水や蒸気を取り出すボイラのことです。このようなボイラは、当然、危険度も高いので、取り扱い、設置、管理などに法的な拘束を設けている訳です。

対して、真空式や無圧式の温水ヒーターは、法的にはボイラに該当しないボイラです。法的にボイラに該当しない理由は、大気圧の沸点を超える温度の液体を保有しないことや、缶体に圧力がかからないなどから、法的な規制を受けるボイラと比べてて安全であるなどの理由からです。法的なボイラに該当しない最大のメリットは、取り扱いに免許や資格が不要で、特別な知識がなくても誰にでも簡単に取り扱えることです。このような資格不要で扱えるボイラを一般には簡易ボイラといいますが、法的には簡易ボイラという言葉の定義はありません。

真空式温水ヒーター

私たちが生活する標準の大気圧(1気圧)の水の沸点は100℃なのは常識ですが、例えば世界で一番高いエベレストの山頂(8,848m)の水の沸点は約70℃になります。

標高が高くなると気圧が低くなるしくみを簡単に説明すると、空気は空高く積み重なっていることをイメージすると分かりやすいです。下の空気は上の空気に常に押しつぶされています。上に行くほど押しつぶす空気の量が少なくなるので、圧力(気圧)は低くなります。水の分子は気圧に常に抑えられています。気圧が低くなるほど、分子は活発に動きやすくなって沸点も下がる訳です。大気圧よりも圧力を下げると沸点も下がっていく現象を「減圧沸騰」といいます。

真空式温水ヒーターは、缶体内を大気圧より低圧な状態にして減圧沸騰させ、安全な範囲で沸点を調整するしくみになっています。100℃以下の低温で沸騰させることで、通常より効率よく素早く温水を取り出せるしくみになっています。近年では、排ガスの潜熱を回収するなどで、さらに熱効率を向上させた真空式温水ヒーターも製品化されています。

無圧式温水ヒーター

無圧式温水ヒーターは、缶体内の熱媒水が大気に開放されていて、缶体に圧力がかからないしくみになっています。大気圧で運転されて、沸点以下の温度の温水を取り出す装置なので、法的な危険度が高いボイラには該当しないのです。

無圧式温水ヒーターは、大気に開放されている構造上、異常な圧力などによる事故の心配が少なく、比較的安全です。構造も比較的シンプルで扱いやすく、熱媒水と温水が分離されていいて、間接的に衛生的な温水を取り出すことができます。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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