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空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第2章 空調方式

2-4 パッケージユニット方式の仕組み

単一ダクト方式やファンコイルユニット方式などの中央熱源方式の空調設備は、熱源などが一箇所に集約化されるため、保守や管理なども一括化できるメリットがありますが、反面、ダクトスペースや機械室などのスペースが大きくなり、空気や水を搬送する動力に使うエネルギーも大きくなる傾向にあります。

これから学ぶパッケージユニット方式やマルチユニット方式は、熱源と空調機の一体構造、あるいは室外機と室内機を冷媒管で接続することによって、機器単体で個別制御できる個別分散熱源方式といわれる空調方式です。

近年、オフィスビルなどは電気室やサーバー室など、機器から発する熱によって冬でも冷房が必要な場合もあります。一つの建物の中で暖房と冷房が混在するようなケースに中央熱源方式の空調は対応できないため、完全な個別制御ができて、設備の構成も比較的シンプルな個別分散熱源方式は、現代の空調設備に欠かせないものになっています。

パッケージユニット方式

パッケージユニット方式は冷凍機、送風機(ファン)、エアフィルタ、各種制御機器などを格納したパッケージユニットを各階ごとに設置して空調を行う方式です。パッケージユニット本体の吹出し口から直接、調和された空気を送るタイプやダクトを経由して空気を送るタイプがあります。

パッケージユニット方式はユニットごとにON/OFFの切替え、温度の調整、暖房している隣の部屋で冷房するなど、完全な個別制御ができます。

従来は冷凍機をユニットに内蔵して冷房専用で使うのが主流でしたが、近年では屋外に室外機を置いて、冷暖房兼用の空冷ヒートポンプを採用する場合が多いです。ヒートポンプの概要については次の第3章で解説することにします。

パッケージユニット方式

パッケージユニット方式



ウォールスルーユニット方式

ウォールスルーユニット方式は建物の外壁や天井に設けた開口部から給気、排気を行う室外機と室内機が一体となった空冷ヒートポンプエアコンです。ユニットを天井から吊る天吊カセットタイプや床置きタイプなどがあります。床置きタイプは窓下に設置することが多く、ペリメータゾーンの温熱環境の改善に有効です。

ウォールスルーユニットによる空調は、中央熱源方式のような熱源からの冷温水の供給が不要で、後述するマルチユニット方式のような室外機からの冷媒配管も不要です。ウォールスルーユニット本体が空調設備として完結しているので、空調システム全体の省スペース化ができます。また、冷温水配管やダクトとの取り合いが無いため、施工の手間も省けます。

ユニットごとの完全な個別運転、制御が可能で、近年ではインバータ制御による高効率化、換気も同時に行える製品が主流になってきました。施工性がよく、単独で運用できるなどから、リニューアル工事などに採用される例も多く見られます。ただし、ウォールスルーユニットは構造上、スリットやガラリといった開口部から給気、排気を行うため、気密性、遮音性、耐風圧性などが問われます。また、機器の振動の躯体への伝達などにも細心の注意が必要です。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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