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空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第2章 空調方式

2-5 マルチユニット方式の仕組み

マルチユニット方式(ビル用マルチエアコン)

マルチユニット方式は、屋上などに設置した1台の室外機に容量やタイプの異なる複数台の室内機を接続することが可能で、各室やゾーンごとの個別制御や運転に対応したヒートポンプによる空調方式です。マルチユニット方式は一般に「ビル用マルチエアコン」といわれ、建築関係者の間では略して「ビルマル」と呼ばれることもあります。

ビル用マルチエアコンの基本構成は、一般住宅のルームエアコンを高性能にした業務仕様といったところです。室内機と室外機を冷媒管でつなぐシンプルな設備構成のため、利用者としても馴染み深く、扱いやすい空調方式といえます。ただし、ビル用マルチエアコンは、単独では換気機能を持っていないため、全熱交換器などの換気システムを導入する必要があります。詳しくは第7章で解説しますが、全熱交換器とは外気と室内からの排気を熱交換して、室内の温度に近づけた新鮮な外気を取り入れると同時に室内の空気を排気するしくみの換気システムです。

ビル用マルチエアコンは室内機の選択や設置の自由度の高さ、制御性、施工性、近年の技術の進歩によるエネルギー効率のよさなどから、中小規模の事務所ビル、マンションなどから、近年では大規模な建物まで幅広く採用されています。

マルチユニット方式(ビル用マルチエアコン)

マルチユニット方式(ビル用マルチエアコン)



ビル用マルチエアコンなどのヒートポンプの種類を大きく分けると、空気熱源ヒートポンプと水熱源ヒートポンプがあります。空気熱源ヒートポンプは空気中の熱を汲み上げて冷暖房を行うもので、一般的なルームエアコンもこのタイプです。なお、ヒートポンプのしくみについては第3章で解説します。対して水熱源ヒートポンプは地下水、河川水、専用の水槽などの水から熱を汲み上げて冷暖房を行います。空気より水の方が、通年、温度が安定していて恒温性に優れることから、空気熱源より水熱源の方が省エネ運転を見込めます。ただし、水源の維持や管理が大変で、設備投資も高くなるなどから、一般的な規模の建物は空気熱源ヒートポンプを採用する場合が多いです。

ビル用マルチエアコンの室外機

ビル用マルチエアコンに使われる室内機は天井埋込カセット形、天井吊形、壁掛形、床置形など、用途や条件に合わせて選択肢が豊富で、空間の広さに応じて異なる容量の室外機を選択できます。

写真の天井埋込カセット形は、現場など建築関係者の間では「天カセ」と略して呼ばれる室内機です。本体は天井裏に埋め込まれているため圧迫感がなく、吹出口や吸込口が天井面に見えるタイプです。比較的広い空間のインテリアゾーンに使われることが多い室内機で、吹出し方向は1・2・4方向に対応します。

天井埋込カセット形

天井埋込カセット形



執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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