工具の通販モノタロウ 空調設備の基礎講座 氷蓄熱式空調システムの特徴

空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第5章 空調設備と省エネ

5-8 氷蓄熱式空調システムの特徴

氷蓄熱式空調システム

夜間の割安な電力を利用して夜のうちに氷をつくっておいて氷蓄熱槽に蓄えます。その氷が溶けるときの冷熱を利用して空調の冷水や冷媒を冷やして昼間の冷房に利用するシステムを「氷蓄熱式空調システム」といいます。なお、氷蓄熱式空調システムを暖房に利用する場合は、冬期は夜間にお湯をつくって蓄熱槽に蓄えて昼間の暖房に利用します。蓄熱槽で蓄えている冷熱、温熱の利用ができなくなれば通常のエアコンと同じ冷暖房のサイクルで運転ができるので、氷蓄熱式空調システムは通常のヒートポンプをより高効率にする補助的なシステムと捉えることもできます。

氷ではなく水を蓄熱槽に蓄える水蓄熱式システムもありますが、水蓄熱式より氷蓄熱式の方が蓄熱槽をより小さく、設備全体もコンパクトに設計できますし、冷水や冷媒の温度も低くできるなどから熱効率もいいので、一般的には氷蓄熱式を採用する場合が多いです。

具体的な蓄熱の利用方法としては、1日の空調時間の全域に渡って蓄熱を利用する「ピークシフト」や1日の中の空調負荷が大きくなる時間帯に絞って蓄熱を利用する「ピークカット」などの方法があります。蓄熱を利用することで熱源設備や受変電設備の容量を縮小できるので、電力消費を削減してランニングコストの軽減、電力の負荷平準化を図れます。

氷をつくる方法としては「スタティック方式」や「ダイナミック方式」などが代表的です。スタティック方式は蓄熱槽に熱交換器となるコイルを通して内部には不凍液の冷媒を流します。コイルに接する水は冷却されて表面に氷をつくるしくみになっています。ダイナミック方式といわれるタイプはシャーベット状の氷をつくって蓄熱槽に蓄えるしくみになっています。

氷蓄熱式空調システムの構成例としては、現場の状況に応じてさまざまなタイプがあります。ユニット化された熱源機と氷蓄熱槽を用いるタイプ、建物ごとに熱源機や蓄熱槽を設計して現場で築造するタイプ、マルチユニット方式のエアコンに蓄熱槽を持たせたタイプ、小規模な事務所や店舗など用に小型化された蓄熱槽と室外ユニットで個別空調できるタイプなどがあります。氷蓄熱式空調システムは昼間の空調負荷が大きくなる事務所ビル、店舗、学校などさまざまな建物、施設で利用されています。現在は業務用として採用されることが多いですが、小型でユニット化された製品も実用化されているので、今後は一般住宅への利用も増えてくるのではないでしょうか。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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