工具の通販モノタロウ 空調設備の基礎講座 ペリメータレス空調の概要

空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第5章 空調設備と省エネ

5-9 ペリメータレス空調の概要

ペリメータレス空調の必要性

オフィスビルなどの室内空間をインテリアゾーンとペリメータゾーンで分けて考えたとき、OA機器からの熱、人体からの熱、照明器具からの熱などによる発熱量が多いオフィスなどでは冬でもインテリアゾーンに冷房が必要になる場合があります。しかし、外からの熱的な要因を受けやすいペリメータゾーンは一般的に、冬は暖房が必要になります。つまり、同一の空間の中で冷房と暖房が混在するケースも考えられるということです。このような場合、ペリメータゾーンの暖房がインテリアゾーンの冷房負荷を大きくして、混合損失(ミキシングロス)が発生しやすくなってしまうので、混合損失をなるべく抑えるペリメータレス空調などの計画が必要とされます。

ペリメータレス空調の一例

ペリメータレス空調を簡単に説明すると、窓まわりの熱を都合に合わせて室内に取り除いたり、取り入れたりする空調設備といえます。一般にはペリメータに熱源を用いた空調設備を設置せずに、熱負荷を排気や還気といった空気の流れを利用して取り除きます。ペリメータゾーンをインテリアゾーンの温熱環境に近づけ、双方の温熱環境を近づけることで混合損失の回避、コールドドラフト防止、省エネ効果などが期待できます。では、以下に代表的なペリメータレス空調の例を示します。

ペリメータレス空調の代表的なもとしては「エアバリア」「エアフローウィンドウ」「ダブルスキン」などです。

外気に面したガラス面とブラインドの間の空気の流れをつくるのがエアバリア、ブラインドではなくガラスとガラスの間に空気の流れをつくるのがエアフローウィンドウです。従来型のエアバリアは窓下側から空気を吹出し、天井側で吸込む方式が一般的ですが、近年ではより効率よくするために、夏は天井側の排気ファンから、冬は窓下側から排気する方法もあります。

ペリメータレス空調の一例

ダブルスキンもペリメータレス空調の代表的な例といえます。考え方としてはエアフローウィンドウに近いです。ダブルスキンは外壁を二重のガラスで覆って、ガラスとガラスの間に空間をつくって空間内の熱を取り除く、あるいは取り込んでペリメータゾーンの温熱環境を改善します。規模が大きな建築物にも有効で、ガラスカーテンウォールの建築物でダブルスキン構造を採用する例もあります。超高層ビルで知られる大阪の「あべのハルカス」はさまざまなエコに関する技術が取り入れられた建築物ですが、その中の一つとしてダブルスキンが採用されています。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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