空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第4章 熱搬送設備

4-14 熱絶縁工事の概要

土木一式工事、建築一式工事、大工工事、左官工事など、建設業法上の工事には29種類の専門工事があります。この29種の専門工事の中に「熱絶縁工事」という業種があります。一般的にはあまり知られていない業種かもしれませんが、空調設備との関わりは深い業種です。

画像名

例えばビルなどの空調設備では、空調機から必要な場所に調和された空気を運ぶためにダクトの施設、取り付けをした後、必要に応じてダクトを保温工事が行われます。一般的な感覚ではダクトに関する工事は「ダクト工事」ということで、ひとくくりに考えて問題ないかもしれませんが、実際の現場ではダクトの施設、取り付けを行う業者とダクトの保温を行う業者は分野の違う別の業種です。29種の専門工事でいえば、ダクトの施設、取り付けを行うのは管工事、保温を行うのは熱絶縁工事の許可を得た業者ということになります。

熱絶縁工事では、保温工事の他、断熱工事やラッキング工事などを専門に行います。以下に「保温工事」「断熱工事」「ラッキング工事」の概要を説明します。

保温工事

空調設備においては暖かい空気は暖かいまま、涼しい空気は涼しいまま必要な場所に届けたいものです。そのためには搬送時の熱をなるべく逃さないようにする必要があるので、ダクトを保温材で包み込みます。これが保温工事です。適切にダクトを保温することで機器の性能を最大限に発揮することができますし、省エネに繋がります。また、結露防止の観点からも保温工事は重要といえます。冷水、温水、蒸気などを運ぶ配管材についても同様の理屈で必要に応じて保温工事が行われます。

断熱工事

断熱工事というと、家の壁に断熱材を入れる工事を連想するのが普通と思いますが、熱絶縁工事業者が行う断熱工事は、ビルなどの排煙ダクトや一般住宅のキッチンの排気ダクトなどを断熱材で包む工事のことです。主に設備に絡む火災時の安全を確保する工事なので、建築一式で行う家の断熱工事と目的が違います。

ラッキング工事

ラッキング工事とは、冷温水管や冷媒管などの保温や断熱した後、金属板や樹脂板でカバーする工事のことです。

ビルの屋上などでステンレスの金属板で防水された配管を見ることがあります。グラスウールなどの保温材は雨などで濡れると保温効果が低下するので、特に屋外に露出する配管などは保温材が濡れないようにカバーするラッキング工事が必要になります。外部の衝撃から保温材や配管自体を保護する目的もあります。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

目次をもっと見る

『空調・電設資材/電気材料』に関連するカテゴリ

『空調・電設資材』に関連するカテゴリ