空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第3章 熱源と主要機器

3-9 水管ボイラの特徴

水管ボイラ

前述した炉筒煙管ボイラは管の中に燃焼ガスを流しましたが、水管(すいかん)ボイラは水管といわれる複数の管の中に水を流して、水管が伝熱部になって蒸気をつくるタイプのボイラです。

主に水ドラム、気水ドラムといったドラム類と複数の水管群で構成されていて、下部の水ドラムと上部の気水ドラムの間をつなぐ水管群の周りを加熱することで、水管の内部を循環する水と熱交換して、効率よく蒸気をつくるしくみになっています。

細い水管に熱を加えるので、水管の一部分だけが高温にならないように、水管内の水は常に循環させておきます。熱による自然対流で循環させる方式を「自然循環式」、ポンプなどの動力で水を循環させる方式を「強制循環式」といいます。ごく簡単に水管ボイラの構造を図にすると下図のようになります。水管自体が曲がっているものを「曲管式」、まっすぐなものを「直管式」といいますが、下図のような曲管式は、ドラムに対して直角に水管をつなぐことで、内部圧力などによる管の負担を軽減します。

水管ボイラ

水管ボイラ



例えば、同じ「やかん」を二つ用意して、一つは水を少なく、もう一つには水をたっぷり入れて二つ同時に火にかけたら、水が少ないやかんの方が速く沸き上がります。水管ボイラは、同じ容量の丸ボイラに比べると、伝熱面積当たりの保有水量が少なくなるので、比較的短時間で蒸気を取り出せる特徴があります。

水管ボイラには低圧小容量から高圧大容量のものまでありますが、一般にはプラントなどの大規模、高圧、大容量で使用するボイラに適しています。

ボイラの圧力が臨界圧力に近くなると、蒸気と水の比重差が少なくなって水の循環がスムーズにいかなくなる場合があります。自然循環式のボイラは内部の構造がシンプルで故障などが少ない反面、水の循環という面では扱いが難しいボイラです。臨界圧力に近い高圧で運転するボイラは強制循環式となります。

貫流ボイラ

貫流ボイラも管の中に水を流す水管ボイラの一種ですが、水ドラムや気水ドラムを持つ水管ボイラよりさらにシンプルで、水管をメインに構成されています。管の一端から入った水が徐々に加熱されて、もう一端から蒸気を取り出すしくみです。

ドラムを持つ水管ボイラより、さらに保有水量は少なくてすむため、熱効率に優れ、素早く短時間で蒸気を取り出せます。また、ドラム類を持たない構造なので、ボイラ自体をコンパクトで軽量に設計することができます。

水管ボイラ、貫流ボイラに共通していえることは、丸ボイラなどに比べて保有水量が少ない分、比較的短時間で蒸気を取り出せるなどのメリットはありますが、反面、負荷変動によって圧力や水位も変動しやすく、運転が不安定になりやすいので、給水量の調節など、素早い制御が求められます。また、比較的小口径の管に水を通すので、管の詰まりや破損を防ぐため、不純物のない処理された高純度の給水が求められます。水の扱いという面では丸ボイラなどよりも難しい傾向があります。

貫流ボイラ

貫流ボイラ



執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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