空調設備の基礎講座
3-1 空調設備の全体像
単一ダクト方式のシステム構成
ビルなどの空調設備はさまざまな機器や装置でシステム全体が構成されています。大前提として空調設備のシステム構成は空調方式、建物の規模や用途などによって千差万別ですが、ここでは、一通りの機器や装置が比較的シンプルに構成される単一ダクト方式を例に、ビルなどの空調設備の全体像を把握しましょう。
単一ダクト方式のような中央熱源方式の空調設備の場合、その全体像は主に熱源機器、主要機器、熱搬送装置の組み合せで構成されています。冷熱源となる冷凍機や温熱源となるボイラといった熱源機器。熱源機器を補助する冷却塔(クーリングタワー)や空調機(エアハンドリングユニット)といった主要機器。熱搬送装置とは、冷却水管、冷水管、温水管などの配管類、配管内部の流体を送り出すポンプ、給気ダクトや外気ダクトなどのダクト類、ダクト内の空気を送る送風機などのことです。熱搬送装置は熱源機器と主要機器をつなぐ役割も担っています。
単一ダクト方式のシステム構成
単一ダクト方式の空調の流れをごく簡単に説明すると、1.冷凍機やボイラといった熱源機器でつくった冷温水を空調機に送る。2.空調機では外気や室内からの還気を取り込んでエアフィルターによって空気中の不純物を取り除く。3.冷却コイル、加熱コイルなどの熱交換器で冷温水と熱交換して適正な温度の空気をつくる。4.空調機内の加湿、除湿装置で湿度を調整する。5.調和された空気を送風機の動力で各室に届ける。といった一連の流れになります。
熱源機器の組み合せ例
単一ダクト方式のような空調設備は、冷暖房に必要な冷水、温水、蒸気を取り出すために熱源機器を使いますが、熱源機器にはいくつかの組み合わせ方法があります。圧縮式冷凍機や吸収式冷凍機などのしくみについては後述しますが、ここでは代表的な熱源機器の組み合わせ例を紹介します。
- 圧縮式冷凍機+ボイラ
冷熱源に圧縮式冷凍機を使い、温熱源にボイラを使う組み合せです。往復式や遠心式の圧縮式冷凍機で冷水をつくって冷房の熱源とし、ボイラで温水や蒸気をつくって暖房の熱源にします。 - 吸収式冷凍機+ボイラ
冷熱源に吸収式冷凍機を使い、温熱源にボイラを使う組み合せです。吸収式冷凍機で冷水をつくり、ボイラで温水や蒸気をつくります。 - 吸収式冷温水機
吸収式冷温水機とは冷温水発生機などともいわれ、1台で冷凍機とボイラの役割を果たして冷水と温水をつくることができる熱源機器です。1台で冷温水をつくれることから設備構成を比較的シンプルにできるため、ビルなどの空調設備では普及率の高い熱源機器です。 - ヒートポンプチラー
空気や水から熱を汲み上げるヒートポンプの技術で冷温水をつくります。原理としては一般住宅などに普及しているルームエアコンと同様で、冷温水をつくるヒートポンプをヒートポンプチラーといいます。近年のヒートポンプ技術の発展は目覚ましいものがあり、吸収式冷温水機などに代わって、より熱効率の高いヒートポンプチラーを採用するケースが多くなっています。
『空調設備の基礎講座』の目次
第1章 空調設備を学ぶ前に
第2章 空調方式
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2-4パッケージユニット方式の仕組み単一ダクト方式やファンコイルユニット方式などの中央熱源方式の空調設備は、熱源などが一箇所に集約化されるため、保守や管理なども一括化できるメリットがありますが、反面、ダクトスペースや機械室などのスペースが大きくなり、空気や水を搬送する動力に使うエネルギーも大きくなる傾向にあります。
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2-5マルチユニット方式の仕組みマルチユニット方式は、屋上などに設置した1台の室外機に容量やタイプの異なる複数台の室内機を接続することが可能で、各室やゾーンごとの個別制御や運転に対応したヒートポンプによる空調方式です。
第3章 熱源と主要機器
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3-1空調設備の全体像ビルなどの空調設備はさまざまな機器や装置でシステム全体が構成されています。大前提として空調設備のシステム構成は空調方式、建物の規模や用途などによって千差万別ですが、ここでは、一通りの機器や装置が比較的シンプルに構成される単一ダクト方式を例に、ビルなどの空調設備の全体像を把握しましょう。
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3-2自然冷媒とフロン類の特徴川にスイカを浮かべて冷やしたり、雪深い地域では雪の中に野菜を保存するなどは昔から行われている自然を利用した食べ物の冷却方法です。ある物質を冷やすためには、その物質よりも温度の低い物質を接触させて熱交換することで、低温側の物質に熱が移って高温側の物質は冷やされます。この熱の移動は単純明快なことですが、物質を冷やすためには欠かせない大原則です。
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3-3圧縮式冷凍機の冷凍サイクル圧縮式冷凍機は内部に圧縮機を持つことが特徴で、圧縮機を使って冷媒を圧縮して空気や水を冷やすタイプの冷凍機を圧縮式冷凍機といいます。