空調設備の基礎講座
3-10 セクショナルボイラの特徴
セクショナルボイラ
例えば今まで学んだ炉筒煙管ボイラ、水管ボイラ、貫流ボイラなどは鋼製ボイラです。ここで学ぶセクショナルボイラとは、鋳鉄(ちゅうてつ)でつくられたボイラのことで、鋳鉄製組合せボイラのことを一般に「セクショナルボイラ」といいます。セクショナルボイラはいくつかの鋳鉄製セクションをニップルとよばれるもので結合させて、ボルトで締めて組み立てられます。

セクショナルボイラ
ボイラの缶体の材料強度を考えたとき、単純に硬ければ強く優れているというものではありません。物質を形成する材料には硬くても脆いもの、柔らかくてもしなやかで強いものなど、多種多様な特性がありますが、缶体に使われる材料は単純な硬さだけでなく、内部応力などに耐えられる靭性(粘り強さ)なども必要になります。
鋼や鋳鉄は、鉄や炭素などからなる合金ですが、その違いを簡単に説明すると、鉄に含まれる炭素の含有量が違います。一般に炭素の含有量が多くなるほど、材質としては硬くなりますが、靭性の面では脆くなります。
鋼製ボイラで使う鋼は、鋳鉄より炭素の含有量を少なくして、数種の合金元素を添加して硬さや粘り強さのバランスをとって、圧力や温度変化などに対応できる合金鋼になっています。このようなことからコスト面では高くなりますが、高圧で使う大規模なボイラなど含め、ボイラの多くは鋼製です。
対して鋳鉄は炭素の含有量は鋼よりも多いので、一般的な性質としては硬くなりますが、反面、鋼より脆くなります。そのため熱の不同膨張などによる割れが発生するおそれがあるなどから、鋳鉄製ボイラの最高使用圧力は、蒸気の場合で0.1MPa(メガパスカル)以下、温水の場合で0.5MPa以下で、温度も120℃以下に限られます。なお、Pa (パスカル)は圧力を示す単位で、1m2当たりにかかる圧力の単位です。Paの1,000倍がkPa(キロパスカル)、kPaの1,000倍がMPa (メガパスカル)です。
鋳鉄製ボイラで使われるのはセクショナルボイラといわれる組合せボイラですが、セクショナルボイラのメリットをいくつか挙げると、まず、鋳鉄は腐食しにくい性質があるので、ボイラの耐用年数としては長くなる傾向があります。また、セクショナルボイラはセクションの数で容量を増やせるようになっているので、設備のリニューアルなどで、将来的に容量の変更が見込まれるような場合にも対応しやすくなります。セクションが分解できる構造上、壊れたセクションだけ取り替えて修理することもできますし、狭い所への搬入がしやすく、現場で組み立てができて、比較的設置が楽といったメリットもあります。
法的な規制もあって、低圧力に限定されて使われるセクショナルボイラですが、圧力のかかったボイラである以上、取り扱いを間違えれば爆発のおそれなどもあるので、ボイラは誰にでも簡単に扱える訳ではありません。次はボイラの取り扱いについて学びます。
『空調設備の基礎講座』の目次
第1章 空調設備を学ぶ前に
第2章 空調方式
第3章 熱源と主要機器
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3-8炉筒煙管ボイラの特徴家庭で手っ取り早く熱湯が欲しいときは「やかん」に水を入れて加熱したり、ポットでお湯を沸かすなどで熱湯をつくります。オフィスビルの空調設備や給湯設備でも熱湯や蒸気が必要になります。
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3-9水管ボイラの特徴前述した炉筒煙管ボイラは管の中に燃焼ガスを流しましたが、水管(すいかん)ボイラは水管といわれる複数の管の中に水を流して、水管が伝熱部になって蒸気をつくるタイプのボイラです。
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3-10セクショナルボイラの特徴例えば今まで学んだ炉筒煙管ボイラ、水管ボイラ、貫流ボイラなどは鋼製ボイラです。ここで学ぶセクショナルボイラとは、鋳鉄(ちゅうてつ)でつくられたボイラのことで、鋳鉄製組合せボイラのことを一般に「セクショナルボイラ」といいます。
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3-11ボイラの取扱い方法ボイラは常圧で使われるのではなく、缶体には圧力がかかっていて、燃焼にも可燃性のガスや重油などが使われることから、取り扱い方を間違えたり、メンテナンスを怠るとボイラの破裂や爆発といった大事故につながる場合もあります。
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3-12真空式と無圧式温水ヒータの特徴法的な規制を受けるボイラは一定の資格者でなければ扱えません。