工具の通販モノタロウ 空調・電設資材 空調設備の基礎講座 居住域を快適にする床吹出し空調方式

空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第5章 空調設備と省エネ

5-10 居住域を快適にする床吹出し空調方式

空間を上下に分けて空調する

ある空間を暖めよう、あるいは涼しくしようと考えたとき、従来の空調は空間全体を均一に快適にしようという考え方が普通でしたが、最近では省エネ面などを考慮して空間を上下に分けて、人が活動する領域だけを快適にする考え方の空調方式もあります。

空間を人が活動する「居住域」と、人の手の届かない「非居住域」に分けて考えてみましょう。たとえばアトリウムや体育館などの天井の高い空間では暖かい空気は上に冷たい空気は下に溜まり、空間の上下の温度差が激しくなるので、居住域の快適性を確保するのが難しくなります。冷暖房をフル回転させても、快適な温度域が人の手の届かない非居住域なってしまっては意味がありません。特にこのような天井の高い空間の空調においては上下のゾーニングを考慮して、人が活動する空間下部の居住域に絞って快適にすることが省エネに有効になることもあります。

床吹出し空調方式とは

前述したように暖かい空気は上に、冷たい空気は下に溜まるので、建物内部の空間を上下で分けて考えると、天井付近に熱が溜まり、足元が寒くなるのが普通です。

近年のOA機器による発熱量が多いオフィスや天井の高い空間などでは、快適な温度域が非居住域にずれてしまいがちです。最近のオフィスビルなどではパソコンやOA機器などの配線を床下で行うフリーアクセスフロアなどの二重床を採用するケースが増えています。床吹出し空調方式は、この二重床の空間、床下チャンバーを利用して床から調和された空気を吹き出し、居住域を快適な温度域にしようという空調方式です。

空調機から二重床の床下チャンバーに調和された空気を送風し、フロアパネルに取り付けられた床吹出しユニットは風量や風向が調整できるようになっていて、人が不快と感じない緩やかな冷風を吹き出します。吹き出された空気は、OA機器や人体などからの熱によって暖められて温度差による浮力で上昇し、天井付近の吸込口から天井の懐、天井チャンバーを利用して排出されます。

なお、室内の空気を押し出して置き換えるような空調方式を置換換気方式ともいい、床吹出し空調方式も温度差による浮力によってタバコの煙などの汚染物質を換気することもできることから置換換気方式のひとつともいえます。

考え方としては後述するタスク・アンビエント空調に似ていますが、床吹出し空調方式の方が空間内の快適な領域は広くなります。空間下部の人が活動する居住域であればどこにいても快適な範囲といえます。居住域に絞って効率よく空調し、人の手の届かない空間上部の非居住域は空調しないように制御して空調するので、当然、省エネ効果も期待できます。

床吹出し空調方式

床吹出し空調方式

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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