空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第6章 個別暖房と直接暖房

6-4 温水暖房の特徴

温水暖房とは

温水暖房はボイラなどでつくられた温水を循環させて、必要な部屋に放熱器を設置して各部屋を暖めるシステムです。蒸気暖房とシステム自体は似ていますが、熱媒が蒸気ではなく温水になったものが温水暖房です。温水暖房も中央暖房(セントラルヒーティング)の一種です。なお、法的にはボイラに該当しない真空式温水ヒータや無圧式温水ヒータといった温水発生機による温水暖房も可能なので、建物の規模によっては熱源の設置や取り扱いも楽になります。

地域冷暖房など、大規模なものではより高温の温水を使う場合もありますが、一般的に温水暖房に使う温水の温度は60~80℃程度です。水は加熱すると膨張するので、ビルなどの大規模な温水暖房のシステム内には膨張を吸収するための膨張タンクを設置します。配管系統の高い位置の方が圧力は低くなるので、タンク容量を小さくできるのなどの都合上、膨張タンクはビルの屋上などに設置されることが多くなります。

温水暖房のイメージ

温水暖房のイメージ

温水暖房の放熱器として代表的なものは蒸気暖房と同様に、コンベクタやファンコンベクタなどです。設置位置は、熱負荷の大きくなる窓の下などに設置して、コールドドラフト防止やペリメータゾーンの温熱環境の改善を考慮して設置するのが一般的です。放熱器は設置位置を間違えるとエネルギー効率が悪くなったり、室内に不快な空気の流れをつくってしまうことがあるので設置位置の配慮は必要です。

一般住宅に普及する温水暖房

温水暖房のようなセントラルヒーティングは熱源を一箇所に集約できるので、各部屋に熱源を置く必要がありません。このことから各部屋には燃焼による臭いがなく、空気を汚さないなどのメリットが生まれます。このようなメリットに加えて、蒸気暖房と比べても設置や取り扱い上の安全性や快適性も高いことから、最近では一般住宅でもセントラルヒーティングによる温水暖房を導入する例が増えてきました。

一般住宅で導入される温水暖房の場合、屋外、キッチン、脱衣室などに熱源機を置きます。キッチンや脱衣室などの屋内に熱源機を置く場合はFF方式といわれる給気と排気を屋外にする方法が取られるので、熱源機を置く部屋についても臭いや室内の空気を汚すことはもちろんありません。温水をつくる熱源機の燃料としては灯油、都市ガス、プロパンガス、最近ではヒートポンプ式もあります。

熱源機でつくられた温水はファンコンベクタ、床暖房、パネルヒータ、浴室暖房、食器洗い乾燥機などに送って暖房や乾燥の用途に使います。部屋の用途や広さなどに合わせて選択することができます。

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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